キズパワーパッドの貼り替え、やめ時はいつ?皮膚科専門医が解説

やけどしたり転んだり、いざというときに頼りになるのが「キズパワーパッド」です。 私自身も、いつもポーチに入れていて、靴擦れができたときに使います。
皆さんの中にも、何か困った傷ができたらまず貼る……と、傷には万能薬という感覚で使ってしまっている方も多いのではないでしょうか?
「傷=キズパワーパッドを貼る」と考えても大きな問題はないのですが、せっかく貼った良い素材が貼りっぱなしでは、台無しになってしまう場合があるので注意が必要です。
なお、キズパワーパッドには傷跡を治す効果はありませんので「傷跡を何とかしたい」という方はぜひ当院までご相談ください。
15年ぐらい前までは、一度できてしまった傷は何ともできませんでしたが、レーザー機器の発展とともに、かなり目立たなくすることができるようになりました。気になる傷跡や、転んでできた傷なども、お任せください。
キズパワーパッドで治った後にシミができてしまった……そんな場合もお任せください。
「シミといぼがキレイに治る」FLALUクリニックではキズのあとにできたシミの治療も得意としています。 お気軽に無料美容相談をご利用ください。
もくじ
Toggleキズパワーパッドの意外と重要な貼り替え時期

今回は、「キズパワーパッドの意外と重要な貼り替え時期」についてご説明していきます。
この記事では、キズパワーパッドと言っていますが、他にも同じ素材の商品がたくさんあります。どの商品を使っていただいても効果に大きな違いはありません。
裏面に「ハイドロコロイド」と書かれている商品を選んでください。 病院で使用されるものと同素材で、使い方や注意点も同じです。
キズパワーパッドが傷をキレイに治すワケ…湿潤環境
まずはキズパワーパッドをいつ貼り替えるかを理解するために、なぜキズパワーパッドを貼るとキレイに治るのかを知っていただきたいです。
キズパワーパッドは実際に使用された方は気づいているかもしれませんが、この素材、見た目よりもしっかりと肌に密着してくれます。
指に貼った場合、上からテープを貼らなくても強く手を振ったとしても外れないですし、横から見ても浮いてくることもありません。また、曲げたり伸ばしたりしても、しっかりと貼りついた状態を保ちます。 じつは、ハイドロコロイドは密着性が良いのです。この密着度が重要で、密着した上でさらに内側からも外側からも水分を通さないため、傷になった部分に湿った環境を常に作ってくれます。 湿った環境は傷を治すのにとても良く、大やけどの治療でも、手術後のキズの保護にも2000年代はじめごろから、傷の治療の最重要条件になっています。
キズパワーパッドのデメリット…防ぐためには貼り替えが必要
密着が良くて傷がキレイに治るのはいいのですが、困ったことに湿って密封されている環境というのは、ばい菌も大繁殖してしまう状態です。
傷の部分でばい菌が中で増殖してしまうと、傷が治りにくくなり、それだけならまだいいですが、ばい菌の攻撃で傷が広がり、どんどん深い傷跡や大きな傷跡になるリスクまであります。
私たちの肌には、どんな人にも常にばい菌が存在していて(常在菌といいます)、その中でも黄色ブドウ球菌が増えたら、本当にまずい。 そんなばい菌が増えるのを防ぐためには、ばい菌が増えたらすぐに気づき対応することが大切になります。
キズパワーパッドをいつ貼りかえるのか?はデメリットを減らすために重要です。
貼り替え時期の見極めポイントをお伝えします。
貼り替え日数の目安は、キズパワーパッドのふやけ方
キズパワーパッドを貼って、数時間様子を見ていたら……白く膨らんできた、なんてことはないでしょうか?
これは、キズパワーパッド自体が、傷からのシミ出てくる水分(浸出液と呼びます)を吸収して起こる変化です。 この変化状況で、キズパワーパッドの貼り替え時期が変わります。
1)あまりふやけてなく、全くはがれてくる様子もないピタッと密着している場合
5日ほど貼りっぱなしでOKです。 キズパワーパッドを無理に剥がすことで、逆に皮膚が痛んでしまうことがあります。
そこで、交換はお風呂に入った時に! 十分に濡らしてキズパワーパッドが柔らかくなったら剥がし、石鹸をつけて傷のところを洗います。
はがした時には、傷から黄色っぽい液体や、膿のようなものが出てないかを観察もお忘れなく。観察したときに、黄色っぽい透明な浸出液が出ている場合は問題はありません。
一方、黄緑色や不透明な緑色をしてたり、開けた際にいやな臭いがする場合は、感染を起こしている兆候です。
その場合は、しっかりと石鹸をつけて洗い少し乾かしてから、お風呂上がり、1時間程キズを乾かしてから新しいキズパワーパッドを貼ってください。
2)白くふやけているが、ぷくっとキズパワーパッドが膨れている状態で垂れてはこない
こんな場合は、2~3日に1回は貼り替えをしてください。 白くふやけている=傷から水分(浸出液・膿)などが出ているということになります。
白くぶよぶよとしたままそれほど広がらない、中の液体が垂れてもこない場合は、2~3日程そのままにしておいて問題はありません。

3)白くふやけて、水分が垂れてくる
先ほどは3日ほど経過して白くふやけてきた際のことについてご説明をしましたが、3日も待てない、貼ったその日のうちにキズパワーパッドがぶよぶよし、隙間からつゆが垂れてくる…というケースもありますよね。

このような浸出液にしても膿にしても、1日で吸収できない程の水分が出てきて垂れてくるという状況は、キズパワーパッドを貼るのには向いていない傷です。
特に黄緑色の膿が、吸収ができずに垂れている場合は、強く感染を起こしている状況です。
この場合は直ちにキズパワーパッドを剥がし、石鹸をつけてしっかり傷を洗い、やや乾燥気味にする処置方法を2~3日ほど毎日行ってください。
具体的な処置は、キズにワセリンをたっぷり目に塗って、その上から「優肌絆」「マイクロポア」テープを貼ります。


傷の処置には、ガーゼを当ててテープで貼るイメージを思い浮かべる方もいるかと思いますが、ガーゼを傷に当てると、水分がガーゼにかなり吸収されて傷が乾きすぎる可能性があるので、今回の浸出液が出なくなるくらいまで乾かす目的には向いていません。
2~3日ほどこの処置法を行い、浸出液や膿があまりでなくなってきたら、再度キズパワーパッドを貼るケアに戻してください。
もしも3日間しっかり毎日傷を流水で洗って、ワセリンを塗ってテープ貼る処置をしていても膿が出続ける場合は、飲み薬の抗生物質も使って、体の内側からばい菌を抑えることが必要になります。
このようなときは必ず病院を受診するようにしてください。
ワセリンを塗るのをおすすめする理由
「そんなに膿が出るならしっかり消毒のために消毒薬を塗った方がいいんじゃないか?」
「抗生物質の塗り薬を使った方がいいんじゃないか?」 そんなふうに思う方もいらっしゃるかと思います。
たしかに、消毒や抗生物質入りの軟膏を使うことも、良いと思います。でも私は、ワセリンを使うほうがメリットが大きいと思っているのでワセリンでの処置をおすすめしています。
ワセリンのメリットその1:過信しないから、洗浄をしっかりする
傷治療の基本は、まず流水で汚れやばい菌をしっかりと洗い流し、傷口を清潔な状態に保つことです。
私が医者になったころは、全身やけども褥瘡(じょくそう)も「洗うなんてありえない。ジャバジャバ消毒液を掛けて消毒」という処置を行っていました。
その後、消毒よりも石鹸洗浄と流水での十分な洗い流しのほうが、傷がより清潔になり、治りが良いということが学会などでも発表されて、今ではすっかり消毒薬を使うことはなくなりました。
どうも、消毒薬を使うとその効果を過信してしまい、実際は十分にばい菌退治ができていなかったようなのです。 それだけでなく、消毒薬が逆に治ろうと頑張っている皮膚の細胞の害になってしまうこともあるそうです。
だから「傷は洗って清潔にする」を合言葉に、洗浄することが大事です。
ワセリンのメリットその2:かぶれを起こしにくい
抗生物質の入った軟膏を使うとかぶれの症状が出る人がいます。かぶれを起こすと、かきむしってしまい傷を広げてしまう危険性があります。
何も余計な成分が入っていないワセリンのほうが、安全に治療できると考えています。
キズパワーパッドの貼り替え時期について動画で解説
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