老人性イボ・脂漏性角化症を解説|顔・首・頭皮・体のイボの原因と治療【医師監修】
もくじ
Toggle1. 老人性イボ(脂漏性角化症)とは?
老人性イボ(脂漏性角化症:しろうせいかくかしょう)とは、年齢とともに生じる良性腫瘍のひとつです。
肌色よりわずかに濃い茶色からこげ茶色をしており、別名「老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)」とも呼ばれます。
大きさは1〜5ミリほどのものが多いですが、中には1センチを超える大きなものも存在します。主にできやすい場所は、顔のフェイスライン、背中、首、下着や服でこすれやすい部分、鼠径部(脚の付け根)などです。

「イボ状に盛り上がったシミのようなもの」と考えていただければイメージがわきやすいかもしれません。
ただ、老人性イボ(脂漏性角化症)は最初から「盛り上がったイボ」として現れるとは限りません。実はその多くは、紫外線による炎症によって、いわゆるシミ(老人性色素斑)として始まります。

初期のイボはごく平坦な薄茶色の斑で、見た目だけではシミと区別がつきません。これが数ヶ月、数年にわたって紫外線などの刺激と加齢により少しずつ細胞が変化していき、表皮の細胞が増殖し、厚みが増して盛り上がっていきます。
やがて表面の角質が重なってザラつきが目立ち、老人性イボ(脂漏性角化症)として典型的な見た目になっていくのです。

この経過を知っていれば、たとえば「最近、前からあったシミがわずかに盛り上がってきたかも?」「触ると表面がザラザラしてきた…?」といったサインに気づきやすくなるはず。
皮膚の状態を正確に把握し、適切なタイミングで皮膚科に相談する目安になるため、ぜひ覚えておいてくださいね。
Dr.mikoのワンポイントアドバイス
特に首イボの場合は老人性色素から進行するケースは少なく、ある日突然、少し盛り上がった小さな腫瘤として生じることが多い、という印象を持っています。
加齢と紫外線、摩擦が主な原因で、でき始めはスキンタッグ(アクロコルドン)と似ていますが、ペタッと平らで茶褐色のイボが増えている場合は脂漏性角化症を疑います。 スキンタッグ(アクロコルドン)と比較すると、ゆっくり大きくなるケースが多く、中には1センチを超える大きなものも存在します。

老人性イボ(脂漏性角化症)はどの年代・性別に多い?

老人性イボ(脂漏性角化症)は、加齢とともに誰にでも起こりうる良性の皮膚変化です。発症のピークは40代後半から60代にかけてで、男女差はほとんどありません。
「老人性」という名称がついていますが、当院にご相談いただく患者さまの年齢でいうと20代、30代の方も多いです。そのため、「脂漏性角化症」という病名で説明することもあります。
高齢になるほど数や大きさが増えやすく、色も濃くなっていくため、見た目の印象が変わって気になる人も少なくありません。
ワンポイントアドバイス
老人性イボ(脂漏性角化症)という名称から考えると意外に思えるかもしれませんが、10代〜30代の頃からでも、このタイプの首イボができる方がいらっしゃいます。
10代の首イボの特徴:ニキビかな?と思う小さなイボが、首に数個ぽつぽつみられるケースが多い気がしています。両親、祖父母など身近な方に首イボがあるなど、遺伝要素が強いことが多い印象です。
20代の特徴:ネックレスや社員証などを首から下げていて、皮膚がこすれやすい首の側面に小さなイボができることが多いと感じます。
30代の特徴:妊娠、出産などの際に、気づいたら首全体に小さなイボが多数できることが気がします。出産後には増えも減りもせず、そのままイボがとどまっていることが多いようです。

老人性イボ(脂漏性角化症)は「良性腫瘍」?
老人性イボ(脂漏性角化症)は表皮の細胞が増えてできる良性腫瘍で、がんではありません。触っても人にうつるものではなく、基本的には健康上の危険は低いイボです。
ただし、まれに急にたくさん出てくるケースがあり、その場合は内臓の病気と関係がないかを確認するために受診が勧められます(レーザー・トレラ徴候と呼ばれますが、関連は稀で議論もあります)。
2. 老人性イボ(脂漏性角化症)の特徴とできやすい部位
色・形・表面(ろう様/ざらつき)について
見た目は「肌にペタッと貼り付いたみたい」に見えるのが定番です。色は薄い茶色〜こげ茶、黒、灰色めまで幅があり、形は小さなポツンから数センチの平たい盛り上がりまでさまざま。
表面はツヤっぽい(ろう様)こともあれば、少しザラつくこともあります。境界ははっきりして見えるのが普通です。
老人性イボ(脂漏性角化症)のサイズと部位ごとの特徴
老人性イボ(脂漏性角化症)のサイズは1ミリ台から数センチまでさまざまです。
できやすい場所は、顔・首・胸・背中などの「身体の中心部まわり」。手のひら・足の裏のほか、口の中などの粘膜には基本できません。
ここからは、イボのできやすい体の部位を取り上げながら「その場所で老人性イボがどれくらい出やすいか」と「見分け方のポイント」を順に紹介していきます。

顔:
顔は紫外線の影響を受けやすく、薄茶色〜褐色の平らな老人性イボ(脂漏性角化症)ができやすい部分です。
年齢とともに数が増え、頬やこめかみなど目立つ位置に現れることが多くなります。
首:
摩擦が多く、平たい老人性イボも見られますが、ぶら下がる小さな突起はスキンタッグ(アクロコルドン)という症状であることが多め。ネックレスや襟の刺激で増えたように感じることがあります。
胸・デコルテ:
胸は摩擦・汗、デコルテは日焼けの影響で、褐色の平たい老人性イボ(脂漏性角化症)が目立ちやすい部位です。
ザラつきやシミ様に見えることもあるため、紫外線と炎症への日常ケアが大切です。
脇の下:
汗と擦れが重なる場所で、スキンタッグ(アクロコルドン)が増えやすい部位。
老人性イボもゼロではありませんが、突起状でぶら下がるタイプはスキンタッグであることが多いです。通気性と保湿を心がけましょう。
お腹:
お腹まわり(体幹)は脂漏性角化症がよく見られる部位です。また、ベルトや衣服のこすれで刺激を受け、スキンタッグ(アクロコルドン)もできやすい部位です。
乾燥や加齢が進むと色が濃くなることもあるため、日常から保湿と刺激を避ける意識が大切です。
背中:
ふだん日光に当たりづらい背中ですが、加齢と共に老人性イボ(脂漏性角化症)が出やすい部位です。
数mm〜2cmほどの貼り付いたようなイボが多発しやすく、衣類との摩擦でかゆみや赤みが出ることもあるので、気になる変化があればすぐに皮膚科に相談を。
手の甲:
指や掌にできるイボはウイルス性であることがほとんどですが、紫外線や摩擦の影響を受けやすい手の甲に、小さな褐色の老人性イボが見られることがあります。
保湿と日焼け止めが役立ちます。
太ももの付け根:
下着との擦れや湿気で、老人性イボよりもスキンタッグができやすい部位です。
黒ずみを伴うこともあり、通気性の良い衣類選びが予防につながります。
足の裏:
足の裏には老人性イボ(脂漏性角化症)はできません。
足の裏に何かできた場合は、魚の目やタコ、ウイルス性のイボなどの可能性が高いため、自己判断せず皮膚科で確認してください。
ワンポイントアドバイス
体のイボはこすれやすい場所にできるので、ウエスト周り、脇の下、ブラのアンダーの部分などによく見られます。
イボができにくいよう、柔らかくて幅広のアンダーバンド付きブラを選ぶなど、ぜひ下着や服の工夫で、摩擦を減らして予防してくださいね。

3. 老人性イボ(脂漏性角化症)の形状と見分け方について
老人性イボ(脂漏性角化症)には、大きく分けて3つの形状があります。
・「平坦なタイプ」
・「ノコギリ歯(鱗状)タイプ」
の3つです。それぞれ、形状の特徴を見ていきましょう。

まず「隆起したタイプ」は、肌の上に小さな板のように盛り上がって見えるタイプで、ややドーム状の形をしています。触れるとつるっとしている場合もありますが、表面がざらつくこともあります。
次に「平坦なタイプ」は、皮膚とほぼ同じ高さで広がるようにでき、境界がくっきりして見えるのが特徴です。初期の段階ではシミのように見えることもあります。
最後に「ノコギリ歯(鱗状)タイプ」は、表面がガサガサとした薄いかさぶたのような質感で、ノコギリの歯や、重なり合う鱗のように見えるのが特徴です。色は茶色〜黒褐色で、年齢とともに厚みを増すことがあります。
これらはいずれも良性ですが、急に大きくなる・色が変わるなどの変化がある場合は、皮膚科での診察をおすすめします。
ワンポイントアドバイス
よく女性の患者さまが「最近、シミがファンデーションで隠れなくなって…」とクリニックにご相談に来てくださいます。実はこれ「シミがイボに変化してしまった」からなんです。
実は、イボはわずかに盛り上がっています。そのせいで、イボのふちにファンデーションの粉がたまりやすく、メイクをするとかえってそこだけが目立つようになってしまうんです。
「あれ?なんだか最近、シミが盛り上がってきた?」と感じたら、美白化粧品では消えない「イボ」に変化しています。そんなときは、お気軽にクリニックにご相談くださいね。

フローチャートで見る老人性イボ(脂漏性角化症)判別のコツ
上記の形状による判別は、あくまで老人性イボ(脂漏性角化症)を見分けるためのヒントの1つです。学会の診断基準や医師ごとの見解には違いもあり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。
特に、色や硬さ、盛り上がりの有無などは、 実際に皮膚を見て・触れてみないと判断が難しいケースも多いため、最終的には専門医の診察が必要です。
しかし、「これってウイルス性?」「脂漏性角化症かも?」「ホクロとは違う?」といったご自身の悩みを整理するきっかけとして、非常に有効な手段です。
以下のフローチャートをチェックして、 ご自身のイボの状態や受診タイミングの目安として、ぜひご活用ください。

4. 老人性イボ(脂漏性角化症)の原因・ケアと対策

老人性イボは、まず土台にあるのが年齢と体質。そのうえで、日々の紫外線や服・マスクなどのこすれが少しずつ積み重なり、目に見える「盛り上がり」として現れてきます。
生活をガラッと変えても完全に防ぐのは難しいですが、リスクを減らすことはできます。 ここでは原因を加齢・遺伝・紫外線・摩擦の四つに分けて、一つずつ見ていきましょう。
加齢
年齢とともに少しずつ増えやすくなります。皮膚の新陳代謝や細胞のふるまいが変わり、表皮が局所的に厚くなるイメージです。出はじめは30〜40代、60代以降で数が目立ってくることも珍しくありません。
遺伝
家族に多い人は、自分にも出やすい傾向があります。体質による部分が大きく、色や形の出方も家族で似ることがあります。
紫外線
顔や首など日光に当たりやすい部位に増えやすいことから、紫外線が関わると考えられています。完全な予防は難しくても、日焼け止めや帽子で負担を減らすことは有効です。
摩擦
襟やマスク、下着がこすれる場所、剃毛の部位など、慢性的に摩擦がかかるところに出やすい傾向があります。タグの位置や素材を見直す、スキンケアで摩擦を減らすといった工夫が役立ちます。
ワンポイントアドバイス
老人性イボの原因として紫外線がよく挙げられますが、紫外線との関連を否定する論文もあり、医学的には見解が分かれています。
ただ、秋田院で診察していると、生活習慣(紫外線)の影響を感じることがあります。秋田は車移動が中心なので、運転席側の窓から入る紫外線を長時間浴びる方が多いんですよね。
そのせいか、首や顔の右側にイボができている方をよくお見かけして、「あ、また右側だ!」と驚くことがあります。東京だと電車移動が多いからか、そういった左右差はあまり見られないように感じています。それなので、当院では、老人性イボの予防として紫外線対策をおすすめしています。特に車移動が多い方は、運転中の対策もぜひ意識してみてくださいね。

老人性イボ(脂漏性角化症)のケアと対策

毎日のケアでは、難しいことより続けやすい小さな習慣の積み重ねが効果的です。紫外線と摩擦をできるだけ避けて、肌のバリアを守る。たったこれだけでも、新しく目立つ盛り上がりや色の残りやすさを抑える助けになります。
老人性イボ(脂漏性角化症)の対策に有効なケア方法をまとめましたので、今日からできることを、無理なく始めていきましょう。
紫外線対策を習慣にする
朝のスキンケアの「最後に必ず日焼け止め」をルール化しましょう。
外出の際は帽子や日傘、可能であればサングラスを常に携帯し、さらに日焼け止めを2〜3時間おきに塗り直すのがよいでしょう。
こすれやすい部位の摩擦を減らす
襟・マスク・下着の「肌への当たり具合」を一つずつ弱めるのがコツ。
また、ムダ毛剃りやスキンケアも「往復させない・こすらない」を合言葉に、普段から最小限の刺激に留めましょう。
やさしい洗顔と保湿で肌のバリアを保つ
洗顔剤をつけての長時間のゴシゴシ洗いは禁物。ぬるま湯+泡で30秒ほど汚れを落としたら、すぐに洗い流し、タオルは押さえ拭きで。
入浴後は5分以内に化粧水、乳液クリームで水分と油分を。保湿は「量より継続」が有効です。
5. 老人性イボ(脂漏性角化症)の受診の目安と注意すべきサイン

老人性イボ(脂漏性角化症)で最初にチェックしたいポイント
老人性イボ(脂漏性角化症)は基本的に良性の皮膚変化です。
ただ、非常にまれではありますが、良性のイボではない深刻な皮膚病である可能性もあります。医師でなければ、良性イボと皮膚がんとの区別はつきにくいものです。
「ただのイボだろう」と放置せず、少しでも不安を感じたら早めに皮膚科で診てもらうことが大切です。もしも下記のような症状があった場合は、すぐに専門医に診断を受けるようにしてください。
形がいびつになってきた
丸かったのに左右非対称になってきた、形が崩れてきたときは注意。
色が濃くなったり、ムラが出てきた
黒や茶色が混じったり、部分的に赤っぽくなるのは要チェック。
急に大きくなってきた
数週間〜数ヶ月で明らかにサイズが変わる場合は要注意。特に大きさが6mm以上ある場合はすぐに受診を。
かゆみや痛みが続く
触れるとかすかに感じる程度の痛みや軽いかゆみではなく、我慢できないほどのかゆみや痛みがあるとき。
出血やかさぶたを繰り返す
出血を繰り返したり、何度もかさぶたになる場合は要注意。
ほかのイボと見た目が違う
他のイボと比べて色・形・質感が明らかに異なるときも一度、医師に診てもらいましょう。
どれかひとつでも当てはまるなら、皮膚科の医師に相談を。
「大したことない」と思っていても、念の為の受診が安心につながります。
ワンポイントアドバイス
「老人性」という名前がついている症状ですが、実際は若年層の方でも「実は気になっていて……」という方が多数いらっしゃる印象です。
この「老人性」という言葉、きっと、昔は今のようにSNSでの情報が乏しく、クリニックを受診したり、大学病院に相談に来られたみなさまが、ご高齢の方が多く「老人性」という名称がつけられたのではないか……と想像します。
だって、この疾患の英語名は「seborrheic keratosis(脂漏性角化症)」。どこにも「老人性」なんて入っていないんです。
さて、話を受診タイミングに戻すと……「気になった時が受診のタイミング!!」早すぎる、なんてことはありません。イボは時間をかけて大きく、濃くなっていく場合が多いので、早めに除去してすっきり快適にお過ごしください。

6. 老人性イボ(脂漏性角化症)の治療
老人性イボ(脂漏性角化症)の治療法について
老人性イボの治療は、イボの大きさ・数・場所・肌質・仕上がりの希望などによって選び方が変わります。
「早く目立たなくしたい」「できるだけ数を減らしたい」「跡を残したくない」など、目的に合わせて治療法を選ぶのがポイントです。
ここでは、老人性イボ(脂漏性角化症)の主な治療法を分かりやすく紹介します。
※以下では、フラルクリニックでは提供していない治療法についても記載しています。当院で提供しているイボ治療についてはこちらのページをご覧ください。
| 治療方法 | 治療イメージ | 向くケース | 治療回数 | ダウンタイム | 副作用・起こりうるリスク |
|---|---|---|---|---|---|
| 炭酸ガスレーザー(CO₂) | 盛り上がりを精密に 蒸散し平らに | 輪郭くっきり・厚みあり 数が少ない/仕上がり重視 | 多くは1回(深さ・大きさで追加) | 当日〜数日 赤み・保護 1〜2週間かさぶた→脱落 数週〜数か月 一時的色素沈着 | 赤み・腫れ・ヒリつき PIH・まれに凹凸・瘢痕・感染稀 |
| 冷凍凝固(液体窒素) | 極低温で凍結→自然脱落 | 多発を一度に減らしたい コストを抑えたい | 複数回になることが多 | 当日〜数日 赤み・水疱 1〜2週間 かさぶた→脱落 数週〜数か月 色素沈着が残ること | 水疱・びらん・PIH/白抜け 取り残し→追加、感染稀 |
| 搔爬+電気乾固 | 削って止血・仕上げ | 厚みが強い/根元しっかり | 多くは1回 | 当日 保護/1〜2週間かさぶた→脱落 数週〜数か月 赤み→薄茶 | 赤み・滲出、PIH、まれに凹凸・瘢痕・感染稀 |
| シェービング(剃除)/小切除 | 浅く削る or 小切開+縫合 病理確認にも | 鑑別が必要・大きめ・出血などのサインあり | 1回(小切除は抜糸あり) | 当日 保護/1〜2週間かさぶた or テープ固定 抜糸/1〜3か月 赤み→薄茶 | 出血・痛み、線状瘢痕(小切除) PIH/色素脱失、創離開、感染稀 |
1) 炭酸ガスレーザー(CO₂)
炭酸ガスレーザーは、イボの盛り上がった部分をレーザーの熱で精密に削り取る治療法です。治療前に局所麻酔を行い、痛みを抑えた状態でイボだけを狙って蒸散させるため、周りの皮膚へのダメージを最小限に抑えられます。
治療のイメージとしては、小さなイボをピンポイントで「なぞって消す」ような感覚。施術後は少し赤みが残りますが、時間とともにかさぶたができ、1〜2週間ほどで自然に皮膚が再生していきます。

この方法は、輪郭がはっきりしていて厚みのあるイボ、または数が少なく、仕上がりをきれいにしたい場合に特に向いています。多くのケースでは1回の治療で完了しますが、イボが深い場合は追加照射を行うこともあります。
ダウンタイムとしては、赤みやかさぶたが1〜2週間程度続くことがあります。治療後は紫外線を避け、保護テープや日焼け止めで肌を守ることが大切です。
副作用としては、一時的な色素沈着(肌が少し茶色くなる)や、まれに軽い凹凸・瘢痕(はんこん)が残ることがありますが、適切なアフターケアを行えば多くは時間とともに落ち着きます。
2) 冷凍凝固(液体窒素)
冷凍凝固は、マイナス196℃の液体窒素を使ってイボの組織を凍らせ、自然に脱落させる方法です。綿棒やスプレーでイボに短時間あて、凍結と融解を繰り返すことで、増えてしまった細胞を壊していきます。
治療のイメージとしては、イボを「冷やして枯らす」ような感覚です。処置の際に少しチクッとした痛みやしみるような感覚がありますが、通常は麻酔を使わずに行えます。

この方法は、イボが複数ある場合や、できるだけ費用を抑えて治療したい人に向いています。一度で取れることもありますが、状態によっては2〜3週間おきに数回通院することもあります。
治療後は水ぶくれができ、それが乾いてかさぶたになり、1〜2週間ほどで自然に剥がれ落ちます。赤みや色素沈着が一時的に残ることがありますが、時間とともに目立たなくなっていきます。
デメリットは、注意深く治療しても治療後に色素沈着が生じる可能性が高いことです。そのため、紫外線に当たりやすい部分ではあまりお勧めできない治療法といえます。
3) 掻爬(キューレット)+電気乾固
掻爬(そうは)+電気乾固は、イボを専用のスプーンのような器具(キューレット)で削り取り、その後に電気の熱で止血と仕上げを行う治療法です。まず局所麻酔をして痛みを抑え、削り取った部分を電気で軽く焼いて表面を整えます。
治療のイメージとしては、「イボを削って平らにし、電気で整える」ような感覚です。処置時間は短く、1つあたり数分で終わることが多いです。

大きめのイボや、厚みがあるタイプのイボ、根元がしっかりしているイボに向いており、ほとんどの場合は1回の施術で完了します。削る深さによっては、赤みがしばらく続くことがあります。(イボが薄い場合は、電気乾固だけで取り切れる場合もあります。)
ダウンタイムはおよそ1〜2週間で、治療部位がかさぶたになって自然に剥がれ落ちます。治療後は清潔を保ち、紫外線を避けるようにしましょう。
起こりうる副作用としては、麻酔の注射による痛み、赤み、色素沈着(肌が少し茶色くなる)、まれに軽い凹凸が残ることがあります。ただし、適切なケアをすればほとんどの場合はきれいに治ります。
4) シェービング(剃除)/小切除
シェービングは、盛り上がったイボの表面を浅く削り取る治療法です。局所麻酔をしてから、医師が専用のメスや器具でイボの根元部分を丁寧に削ります。削った後は止血をして、テープなどで保護します。
小切除は、イボを小さく切り取って縫合する方法です。見た目がイボとがんの区別がつきにくい場合や、確定診断のために病理検査が必要なときにも行われます。
この治療は、盛り上がりが大きいイボや、出血している、色の変化があるなど心配なサインがある場合に向いています。多くは1回で終わりますが、縫合を行った場合は抜糸のために再診が必要になります。

ダウンタイムは1〜2週間ほどで、切除部位をテープで保護しながら経過を見ます。場所によっては、洗顔や運動などを控える期間が設けられることもあります。
副作用としては、縫合痕が残ることや、一時的な赤み・色素沈着が見られることがあります。目立ちにくくするためには、医師の指示に従ってテープ保護と紫外線対策を続けることが大切です。
5) 外用・内服薬
外科的な治療では、赤みがしばらく残ったり、小さな跡が残ることがあります。そのため「もう少し手軽に治したい」という声も多く、最近では塗り薬や飲み薬の研究も進められています。

ビタミンD3軟膏は、皮膚科で処方できるイボ治療薬のひとつです。1日1〜2回を目安に3か月ほど塗り続けると、約3割の人でイボが小さくなったり消えたりするという報告があります。
ただし、全員に効果があるわけではなく、改善が見られない人も多いのが現状です。
また、日本では未販売の外用薬について、海外で行われた臨床研究もあります。937人を対象に、体の4か所にあるイボに最大2回塗布し、3か月後に評価したところ、4つのうち3つ以上が消えた人が24%だったと報告されています。
こちらも手軽さはあるものの、効果が出るまで時間がかかり、改善が見られるのは限られた人にとどまります。
そのほか、飲み薬による治療も研究段階にありますが、データはまだ少なく、安全性や効果が十分に確認されていないため、現時点では日常診療で推奨される段階には至っていません。
上記の観点から、老人性イボの治療は物理的な処置が基本です。まずは診察を受けて状態を確認し、自分に合った治療法を医師と相談しながら決めることが大切です。
老人性イボ(脂漏性角化症)の治療を選ぶ判断基準
イボの治療法は「数」「大きさ」「部位」「肌質」「仕上がりの希望」に加えて、「保険適用の可否」で選び方が変わります。
仕上がりを重視して、少ないイボを確実にきれいに取りたい場合
炭酸ガスレーザーが向いています。細かい調整ができ、跡をできるだけ残さず治療したい人におすすめです。保険が適用されない自費での治療になることが多いため、費用や通院回数は事前にしっかりと相談しておきましょう。
保険適用の範囲内でイボ治療がしたい場合
冷凍凝固(液体窒素)を選ぶことが多いです。ただし、1回で一気に取りきる治療ではなく、数週間おきに少しずつ減らしていく進め方が基本です。
体質によっては色素沈着が残りやすいというデメリットもあるので、治療に当たっては医師と相談しながら行うことがおすすめです。
見た目や触り心地から皮膚がんなどとの区別が難しい場合、または盛り上がりが大きいイボの場合
シェービングや小切除で取り、病理検査でしっかり確認する方法が安心です。診断と治療を兼ねるため、保険の対象になることが一般的です。
場所や大きさによって方法が変わるので、診察で方向性を決めていくことになります。
それぞれにメリットと注意点があるため、まずは医師に相談し、自分の肌の状態や希望に合った治療法を選ぶことが大切です。
ワンポイントアドバイス
どの治療を選んでも、イボを「除去」した場合は、患部を保護するため治療後にテープを貼る必要があります。
赤みの残りやすさや色素沈着の起こりやすさは肌質によって個人差があるので、まず目立たないところで1つお試し治療を。経過を見ながらスケジュールと相談して全体へ進む、という2段階治療もおすすめです。

7. 老人性イボ(脂漏性角化症)の再発予防

脂漏性角化症は良性ですが、気づいたら別の場所に新しく出てきたり、治療した箇所に近しい部位でイボができてしまうことがあります。
医学的には完全なイボの予防法はまだ不明です。ただ、術後のケアと毎日の習慣を少し整えるだけで、体質や年齢の影響をゼロにはできないものの再発のしやすさや色の残りやすさはぐっと変わります。
イボの再発予防策は、先ほど解説した「イボをできにくくするケアと対策」と方針は同じです。ここからは改めて、今日から無理なく続けられる実践しやすいコツとして、順番に紹介します。
紫外線対策を習慣化
毎朝の日焼け止め、外出が長い日は2〜3時間おきの塗り直しを。携帯できる帽子や日傘、サングラスを普段からバッグの中に常備するのもよいでしょう。
摩擦ポイントを一つずつ減らす
襟やマスク、眼鏡や帽子の当たり方、下着やタグなどによる擦れ、剃毛の頻度などを見直してみましょう。生地は滑らかなものを選ぶとより刺激を抑えられます。
スキンケアはこすらない
洗顔はぬるま湯と泡でやさしく、タオルは押さえる拭き方で。入浴後は5分以内の保湿で、肌のバリアを守りましょう。
刺激の強い自己処置はしない
強いピーリングや削り取り、市販のイボ取りを自己判断で使うのは避けましょう。炎症や色素沈着、診断の遅れにつながります。
ワンポイントアドバイス
性は、妊娠や出産の時期にイボができやすい印象があります。とても忙しい時期ではありますが、予防のためには、首まわりの衣類やアクセサリーによる刺激をできるだけ減らすなどして、紫外線対策を意識することが大切です。

8. 老人性イボ(脂漏性角化症)のよくある質問
老人性イボ(脂漏性角化症)は食事やサプリで消える?
老人性イボ(脂漏性角化症)は、加齢や紫外線の影響で皮膚の細胞が厚くなることで生じるため、食事やサプリだけで自然に消すのは難しいとされています。ただし、ビタミンC・E、亜鉛、ポリフェノールなどの抗酸化成分を意識的に摂ることで、肌の新陳代謝を整えたり、紫外線ダメージを軽減する助けにはなります。
老人性イボ(脂漏性角化症)は保湿や美白アイテムで小さくなる?
保湿や美白ケアでイボを完全に消すことはできません。早めの皮膚科相談とあわせて、毎日のスキンケアを丁寧に続けることが大切です。乾燥を防いで肌のターンオーバーを整えることで、表面のざらつきやくすみがやわらぐ場合があります。
老人性イボ(脂漏性角化症)はダイエットや運動で減る?
ダイエットや運動で直接イボが減ることはありません。ただ、血流や代謝が良くなることで肌の再生が促され、全体的な肌状態が整いやすくなります。また、ダイエットによって身体がサイズダウンすれば肌と洋服などとのこすれが減るため、イボができにくくなると考えられます。
老人性イボ(脂漏性角化症)は、他人にうつる? がんになる?
感染症ではないので人にうつりません。脂漏性角化症そのものは良性でがん化しません。ただし、見た目が似た別の病気があるため、短期間で大きくなる、色むらが強い、出血するなどの変化があれば皮膚科の受診をおすすめします。10. フラルクリニックでの老人性イボ(脂漏性角化症)の治療について
FLALUクリニック、AdeBクリニックでは、「老人性イボ(脂漏性角化症)」の治療について、顔のイボは炭酸ガスレーザーを、首や体のイボはmikoメソッド治療をおすすめしております。 内容については、下記のバナーからご確認ください。