キズパワーパッドを貼って良い傷と貼ってダメな傷を皮膚科専門医が解説

キズパワーパット

「予期せずつまずいてできてしまった傷」や、「カップラーメンを作ろうと思ったときにお湯をこぼしてヤケドしてしまった」など、思いがけない場面で傷を負うことがあります。

傷を作ってしまうのは一瞬のことですが、その後の手当ては意外と手間と時間がかかるものです。さらに、「傷跡が深く残ってしまうのではないか」という不安も付きまといます。

キズパワーパッド

「キズパワーパッド」「クイックパッド」「ケアリーヴ 治す力」などの製品は、傷の手当てによく使われています。これらはいずれも、薄いオレンジ色でゲル状の「ハイドロコロイド」という成分を使用しています。

ハイドロコロイドで傷を直す

ハイドロコロイドという成分でどうやって傷を治すのか、解説します。

ハイドロコロイドは傷口から出る体液を吸収してゲル状の層を作り、傷を保護しながら治癒を促進する素材です。傷を乾燥させず、適度な湿潤環境を保つことで、痛みを和らげながら早くキレイに治すことができます。

病院でも、傷の治療や手術の後などによく使用していたものですが、それがあるときドラッグストアでも販売されるようになりました。

いまではドラッグストアやコンビニエンスストアなど、どこにでもおかれているくらい、「傷といったらまずこれを使おう!」と思えるような良い治療薬として一般に浸透しています。

しかし、実は使用する際にとても大事なポイントがあります。

キズパワーパッドを貼って良い傷とダメな傷がある

貼ると良い傷と、貼ると逆に傷が悪化し、傷自体がどんどん深くなってしまう傷があるのです。

そこを見極めることが大切です。

外来でヤケドした患者さまを診ていると、何人もの患者さまがキズパワーパッドを貼って来院されます。

しかし、キズパワーパッドさえ貼れば大丈夫、「なんでも治る」と思っている方は要注意です。注意書きを見ると、使用して良いケースと使用してはいけないケースが、明記されています。

傷をキレイに治すためのポイント

傷

最初に、傷をキレイに治すための、ポイントをお伝えします。

最近、傷の治療では「ウェットドレッシング」という方法が基本となってきています。「ウェット = 湿った状態」で「ドレッシング = 覆う」のが傷の治療の基本です。

かつては傷を乾燥させ、かさぶたを作ることで治癒を促すと考えられていましたが、そのような乾燥による治療法は、すでに20〜30年前の古い方法です。

傷を乾かして治す方法は、確かに傷は治るのですが、キレイには治らないのです。 凹んだ傷跡や、傷口がひきつれたりなど、いわゆる傷跡が残る可能性が高い治療が乾かして治す治療方法です。

一般的に乾燥させる治療方法だと、傷は1週間程度で治ります。それに対して、ウェットドレッシングという湿った状態で治す治療は、乾燥させて傷を治す方法よりも、傷が治るまで3〜4日から長いと1週間くらい余計にかかります。

治るまでは少し時間がかかってしまいますが、傷跡が残りにくいという大きな利点があるため、湿った状態で治す方法は本当に優れた治療法です。

すぐにキズパワーパッドを貼って良い傷、4タイプ

靴擦れ

キズパワーパッドは、「平で、浅くて、皮が剥けている」状態の傷に使うと、とても効果的です。

1番イメージしやすいのは、靴擦れです。靴擦れは、平らで浅く、ちょっと皮が剥けてる傷の代表選手です。

以下に、すぐにキズパワーパッドを使って良い傷をまとめました。

①靴擦れ
②家の中でぶつけて皮が剥けた程度の傷
③お湯がかかって赤くなっている程度のヤケド。皮も剥けていない、水ぶくれにもなっていない、赤くなって少しヒリヒリするという状態であればキズパワーパッドをすぐに貼っても大丈夫です。
④擦り傷……擦り傷自体にバイ菌がついていると治りが悪くなります。石鹸でしっかりと流水で洗い、バイ菌をしっかり洗い流してからキズパワーパッドを貼ってください。

すぐにキズパワーパッドを貼ってはいけない傷、4タイプ

傷

次に、キズパワーパッドを貼ってはいけない4つの傷のタイプをご説明していきます。

① 屋外で転んで出血している傷

屋外で転倒した際の傷は、砂利やゴミなどの異物が皮膚に入り込んでいる可能性があります。

さらに、どのような細菌が付着しているか分からないため、キズパワーパッドで密閉してしまうと感染を悪化させるリスクがあります。この場合は、まずは異物を取り除き、清潔な状態を保つことが重要です。

② 動物に噛まれた傷

動物に噛まれた時の傷は、見た目以上に深く損傷していることが多いです。

さらに口腔内の細菌が傷の奥まで入り込んでいる危険性があります。流水や石鹸で洗浄しても完全に除去できるわけではなく、キズパワーパッドで覆うと内部で細菌が繁殖し、感染を悪化させる恐れがあります。動物に噛まれた場合は、必ず医療機関を受診してください。

③ 受傷から時間が経過した傷

傷ができてから数日が経過し、黄緑色の膿が出ている場合は、すでに感染が進行している可能性があります。こうした傷にキズパワーパッドを使用すると、膿や細菌が閉じ込められてしまい、皮膚が広範囲に破壊される危険があります。

このような場合も、速やかに医師の診察を受けることが望ましいです。

④ 湯たんぽによるヤケド

一見軽いように見える湯たんぽによるやけどは、深部にまでダメージが及んでいるケースが多いです。深いやけどをキズパワーパッドで覆うと、内部の状態が確認できなくなり、適切な治療が遅れる可能性があります。

湯たんぽによるやけどは、まず深さや経過を慎重に確認することが重要なため、キズパワーパッドは使用しないでください。 深い傷や感染の疑いがある傷に、いきなりキズパワーパッドを使用することは非常に危険です。

まずは医療機関で診察を受け、必要に応じて抗生物質などの治療を行ったうえで、状態が安定してからキズパワーパッドを使用するようにしてください。

キズパワーパッドを使用すべき傷と避けるべき傷についてご紹介しましたが、実際の傷の状態は一人ひとり異なります。 判断に迷う場合は、自己判断せず、必ず皮膚科や医療機関にご相談ください。

その他の傷

お湯をかけて赤みが出ただけの軽いヤケドは、キズパワーパッドを使用して問題ありません。

しかし、先ほどお伝えしたように「湯たんぽによるやけど」は深刻なケースが多いため、使用は避ける必要があります。

では、それ以外のヤケドはどうでしょうか。例えば「水ぶくれができて、その水ぶくれが破れてしまった」という状態の場合、「すぐにキズパワーパッドを貼ってよいのか」と迷う方もいらっしゃるでしょう。

この場合は、次の3つの条件すべてを満たしたときにのみ、使用が可能です。

キズパワーパッドを貼ってよいかどうかの3つのチェックポイント

・出血はないか
・濁った膿が出ていないか
・透明な浸出液が少量であるか

この3つをすべてクリアしている場合は、キズパワーパッドを使用して問題ありません。

反対に、1つでも当てはまらない場合は使用を控えてください。

使用できない場合の処置方法

3つの条件を満たさない場合は、以下のような処置を行います。

・毎日の処置(2〜3日間)

傷を石鹸でしっかり洗い、清潔なタオルで拭いたあとにワセリンを塗り、絆創膏で覆います。
これを毎日繰り返すことで、傷が回復しているか、膿んでいるかを確認できます。

・2日後の確認

出血や膿、浸出液が多く残っていないかをチェックします。まだ多い場合は、さらに2日間同じ処置を継続してください。

・4日後の再確認

出血や膿がなく、浸出液も落ち着いている場合は、キズパワーパッドを使用してよいタイミングとなります。

正しく使えば治りがスムーズに。

3つの条件をクリアした状態は、「平らで浅く、薄く皮が剥けた状態」に近いといえます。この段階でキズパワーパッドを使うと、傷を保護しながらきれいに治していくことが可能です。

キズパワーパッドは医療現場でも火傷や手術後に使用される優れた素材です。

しかし、使い始めるタイミングを誤ると、かえって感染や治りの遅れにつながるため、状態を見極めながら正しく使用することが大切です。

キズパワーパッドを正しく使って傷をキレイに治そう

今回お伝えした情報を知っておくと、傷ができた際にすばやく対応できて、適切なケアをスタートできるでしょう。すると、傷がキレイに治ります。

キズパワーパッドは、上手に使うと大変役に立つアイテムです。ぜひ常備しておくと良いでしょう。

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傷跡がなかなか治らなくて気になっている方や、跡が残ってしまった方は、早めに医師に相談してクリニックを受診することをおすすめします。

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