肝斑(シミ)治療

もくじ
Toggle肝斑とは
肝斑は、頬骨のあたりに現れる褐色のシミで、30代から50代の女性に多く見られます。
女性ホルモンの変動(エストロゲンなど)と紫外線の刺激が重なることで、メラニンを作る細胞(メラノサイト)が過剰に働き、色素が沈着してできる“後天性”の色素斑 です。
その見た目や治療の反応に独特の傾向があり、ほかのシミとは区別して考える必要があります。
肝斑の特徴
肝斑は、両頬に左右対称で現れる淡い茶色のシミです。他のシミと見た目は似ていますが、境界がはっきりしない点が特徴として挙げられます。
また、真皮の炎症があまり見られないため、レーザー治療への反応が独特で、施術の際は注意が必要です。
肝斑はアジア系の女性に多く見られますが、紫外線量の多い地域では白人にも生じることがあります。
老人性色素斑とは異なり、炎症性の物質が広がることは少なく、皮膚が薄くなったり乾燥したりしにくいという特徴を持っています。
肝斑は男性にもできる?
肝斑は女性に多く見られるため、「女性特有のもの」と思われがちですが、男性にも生じることがあります。
男性の肝斑は、加齢による皮膚のバリア機能の低下や、紫外線などの外的刺激が関与して発症すると考えられています。女性ホルモンの影響が大きいとされていますが、男性の場合、日常的なヒゲ剃りによる摩擦が誘因となる可能性も指摘されています。
国内外の疫学調査では、肝斑患者の約1割が男性という報告もあります。男性では皮脂量が多いため外用薬の浸透が異なる場合もありますが、治療前に肌状態を評価し、摩擦を避け、日焼け対策を徹底すれば女性と同様に色素沈着を軽減しやすいでしょう。
強いレーザー治療を自己判断で受けるよりも、まずは原因に目を向けてケアを始めることが、肝斑の悪化や再発を防ぐうえでは大切です。
肝斑は紫外線や摩擦などの刺激によって悪化することが知られており、紫外線対策や摩擦を避けること、トラネキサム酸の内服などが治療の基本とされています(日本皮膚科学会「美容医療診療指針」)。
ヒゲ剃りなどの日常的な刺激が肝斑に与える影響については、現時点で明確な科学的根拠は十分ではありませんが、摩擦を避けることは一般的に推奨されています。
肝斑ができる原因

肝斑(頬骨のラインに沿ってできる茶色いシミ、色素沈着)の原因・発生メカニズムは、まだ完全には解明されていません。
しかし、特定の要因をもつ方に現れやすいシミであることは知られています。おもに、以下のような4つの要素が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
1. 遺伝的な体質
ご家族、特にご自身より年配のご親戚に肝斑がある方は、肝斑ができやすい体質を受け継いでいる可能性があります。遺伝的な素因が関係していると考えられているため、注意が必要です。
2. 物理的な刺激
洗顔やクレンジングで肌を強くこする癖や、刺激の強い化粧品の使用、マスクによる長時間の摩擦などは、肌にとって大きな負担となります。
こうした物理的な刺激がシミの原因となるメラノサイトを活性化させ、肝斑の引き金になることがあります。
3. 紫外線
紫外線はメラニンの生成を促すため、肝斑を悪化させる大きな要因になります。日常的に日焼け対策をあまりしない方は、肝斑のリスクが高まるでしょう。
4. 女性ホルモンのバランス
妊娠・出産や更年期などでホルモンバランスが大きく変動するタイミングは、肝斑を発症したり悪化させたりする一因とされています。
経口避妊薬(ピル)の服用が影響する場合もあります。
肝斑とシミやそばかすとの違い・見分け方

肝斑とその他のシミは、見た目が似ていても種類によって治療法が大きく異なります。色や位置、季節による変化を知ることで、ご自身のケアやクリニック選びの参考になるでしょう。
肝斑は両頬に左右対称に広がる薄茶色の影のようなシミです。老人性色素斑は紫外線でできる輪郭のはっきりした丸いシミで、そばかすは遺伝的な小さく散らばる点々としたシミです。
クリニックでの診察では、ガラスの板(ダーモスコピーや圧診用ガラス板)で皮膚を押さえて色の変化や境界のぼやけ具合を確認し、肝斑かどうかを見分けます。肝斑は押しても色がほとんど変わりませんが、血管が関与する赤みや炎症性のシミは一時的に薄くなることがあります。
なお、肝斑の種類は自己判断が難しい場合も多く、専門医による診断が推奨されています。シミの種類を正確に知ることは、肌に合った治療法を選び、適切なケアで改善を目指すために大切なことです。
肝斑と類似の症例
セルフチェックでは違いがわかりづらい症例をご紹介します。肝斑と似ているのは、「ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)」と「そばかす(雀卵斑)」です。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
肝斑と類似の症例1. ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
ADM(後天性真皮メラノーシス)は、肝斑とは異なる特徴をもつシミの一種です。その発症には2つの典型的なパターンがあります。
[ケース1:若年期に発症]
肝斑は、中学生ごろから24歳ごろまでの間に発症することが多いです。この時期に現れるADMは、比較的早い段階で目立つようになります。
[ケース2:成人期に発症]
肝斑は、30〜44歳ごろにかけて発症する場合もあります。このタイプは、加齢やその他の要因と関連していることが考えられます。
[ケース3:肝斑とADMが合併]
ADMという青みがかったシミは、肝斑と一緒にできることがあります。この2つが重なっている場合、それぞれに合った治療を選ぶことが大切です。
ADMは、肌の奥深くにできるため、専用のレーザーを使うことで、何度か治療を重ねれば、目立たなくなりやすい特徴があります。しかも、一度キレイになると、再び出てくることはほとんどありません。
ただし、肝斑とADMでは治療方法が違います。見た目が似ていても、肝斑にはレーザーが向かないこともあるので、どちらのシミなのかをしっかり見分けることがとても大切です。そのためには、経験豊富な医師に診てもらうのが安心です。
肝斑と類似の症例2. そばかす(雀卵斑)
そばかす(医学的には「雀卵斑(じゃくらんはん)」と呼ばれます)は、肝斑とは見た目やでき方が違うタイプのシミです。
そばかすは、鼻や頬を中心に、小さな茶色い点々が広がるのが特徴です。多くの場合、子供のころから現れ、家族にも同じようなシミがあることがよくあります。また、日差しを浴びると色が濃くなりやすいですが、大人になるにつれて目立たなくなることもあります。
・発症年齢
そばかすは3歳ごろから現れ始め、特に両頬を中心に多発します。個々の色素斑は小さく、直径3mm程度の点状です。
・形状と分布
色素斑はドット状で、それぞれが独立しているのが特徴です。また、肝斑とは異なり、鼻背(鼻の中央部分)にもドット状の色素斑が見られることがあります。
・季節による変化
そばかすは、夏の強い日差しを浴びると色が濃くなり、冬になると少し目立たなくなることがよくあります。こうした季節による変化も、そばかすならではの特徴です。また、そばかすは肝斑と違って、レーザーなどの治療で薄くしやすいという利点があります。そのため、そばかすかどうかをしっかり見分けることで、自分に合った治療を受けやすくなります。
肝斑かどうかの自己診断は非常に困難
典型的な肝斑であれば、ご自身でも見分けられるかもしれません。しかし、実際には症状や分布に多くのバリエーションがあります。
そのため、皮膚科専門医でも肝斑かどうか判断に迷う症例があり、診察する医師(クリニック)によって診断が異なる場合もあるのです。
ご自身のセルフチェックで「肝斑なし」と判断し、それにもとづいて行ったスキンケアが、かえって肝斑を悪化させてしまうこともあります。
自己判断で少しでも迷ったときは、クリニックで正確な診断を受けることをおすすめします。
FLALUクリニックでは、肌分析画像診断器「re-Beau 2(レビュー)」などを使って肌の状態を撮影し、その画像をもとに診断しています。
肝斑の治し方

肝斑をキレイにしたいと思ったときは、「これさえやればOK」と1つの方法にしぼるより、いくつかの対策を組み合わせていくことが大切です。日々の生活のなかで肌をいたわる工夫をしながら、クリニックでの治療も取り入れることで、肝斑は少しずつ薄くなっていきます。
この章では、病院で受けられるレーザー治療、医師から処方される薬、そしてドラッグストアなどで買える市販薬という3つの選択肢を取り上げながら、自分に合った方法を見つけるヒントをお届けします。
肝斑に効果的なレーザー治療とは
肝斑に対応するレーザー治療は、主にレーザートーニングとピコレーザー(ピコトーニング)です。肌に優しい弱い光を何度も当てて、シミの元となるメラノサイト(色素を作る細胞)の働きを少しずつ落ち着かせていきます。
レーザートーニング
レーザートーニングは、肌への刺激をできるだけ抑えた弱いパワーのレーザーを顔全体にまんべんなく当てて、シミや肝斑のもとになるメラニン色素を少しずつ分解し、体の外に排出しやすくする治療です。
この治療では「QスイッチNd:YAGレーザー」という特殊なレーザーを使い、2~4週間ごとに通院して照射を受けます。強いレーザーで一気にシミを取るのではなく、肌にやさしい低出力のレーザーを何度も重ねていくのがポイントです。だいたい5~10回ほど通うことが多く、3回目くらいから「肌が明るくなってきた」と感じる人が多いようです。
レーザートーニングの大きな魅力は、治療後すぐにメイクができるほどダウンタイムが短いこと。赤みが出ても軽く、普段通りの生活を送りながら治療を続けられます。忙しい方や、目立つダウンタイムが気になる方にも続けやすい方法です。
肝斑治療(レーザートーニング)の注意点
レーザートーニングで肝斑治療を受けるときは、前日と当日のちょっとした準備がとても大切です。実は、産毛の処理やメイクの選び方など、小さな注意点を知っているだけで、治療がスムーズに、安全に進められるのです。治療前日と当日に知っておいてほしいポイントを分かりやすくお伝えします。
・治療前日までのお願い
顔の産毛が多いと、レーザートーニングのパワーを産毛に吸収されてしまい、治療効果が落ちます。
頬を下から上に撫で上げたときに産毛の引っ掛かりを感じるような状態の場合は、治療の前日までに産毛剃りを行ってください(産毛を剃り忘れていても治療は可能です)。
・治療当日のお願い
レーザートーニングを受ける当日は、守っていただきたいお願いがあります。それは、ラメ入りのメイクアイテムを使用しないことです。
治療前に洗顔を行いますが、アイシャドウなどのラメが頬に落ちている場合、2~3回洗顔をしても完全に取り除けないことがあります。このラメが肌に残った状態でレーザーを照射すると、赤いニキビのようなぷつぷつとした症状が出る可能性があります。安全で効果的な治療を行うためにも、治療当日はラメ入りの化粧品の使用を避けていただくようお願いいたします。
肝斑治療(レーザートーニング)の治療プラン
- 治療初期:最初は1~2週に一度ペースで進めます。
- 治療中期:肌の反応を見ながら、3~4回(一度/1〜2週)ほど、施術を繰り返します。
- 治療後期:その後、1ヶ月に一度程度行います。
レーザートーニングで肝斑の改善が期待できる理由
トーニングには以下の2つの効果があるため、シミや肝斑などの改善が期待できます。
①メラニン生成を抑える効果
メラニンの過剰な生成を抑制することで、色素沈着を薄くします。
②肌全体への穏やかな刺激による効果
穏やかなレーザー刺激が肌全体に働きかけ、色素を徐々に排出させます。
これら2つの作用が相乗的に働くことで、肌の色ムラが改善されていきます。
レーザートーニングの嬉しい+αの効果
レーザートーニング治療は、「広く」「深く」「マイルドに」照射することで肝斑を改善するだけでなく、もう一つ嬉しい肌の変化をもたらします。それは、毛穴が引き締まり、すべすべの肌になること。そして、肌のハリが出てたるみが解消されることです。
レーザートーニングによって頬全体の深い部分(真皮層)に穏やかに熱が加えられることで、肌内部のコラーゲン生成が促進されます。その結果、肌にふっくらとしたハリが生まれ、まるで10年前のような若々しい肌を取り戻すことが期待できるのです。
肝斑治療だけでなく、美肌効果も得られる点がレーザートーニングの大きな魅力ですね。
クリニックにおけるレーザートーニング治療の流れ
1)肌分析
レーザートーニング治療の前には、まず洗顔を行い、その後、肌分析を実施します。

当院で使用している肌分析画像診断器「re-Beau 2(レビュー)」は、肉眼では確認しづらい肌トラブルを詳細に解析できる高性能な機器です。
この機器では、UV画像を用いて以下のような隠れた肌状態を撮影・診断します。隠れたシミや肝斑、表面には見えない色素沈着も確認可能です。
2)医師による診察

実際のお肌の状態、分析機器の情報と合わせて拡大鏡(ダーモスコピー)や皮膚ガラス圧視板などを使用しながら、シミの状態を診断していきます。


ピコトーニング
ピコ秒(1兆分の1秒)という非常に短い時間で照射される低出力のレーザーを、顔全体に均一に当てることで、シミやくすみ、肝斑などの色素トラブルを少しずつ改善していく治療法です。ピコトーニングはレーザートーニング同様、肝斑治療に有効ですが、それぞれ特徴が異なります。
パルス幅:
レーザートーニングはナノ秒(10億分の1秒)単位で照射するため、肌の深部にまで到達し、メラニン色素を熱で破壊します。一方、ピコトーニングはピコ秒(1兆分の1秒)単位で照射し、衝撃波によってメラニン色素を粉砕することで、肌表面への熱ダメージを軽減します。
効果:
レーザートーニングは色素沈着の改善や美白効果に適しており、肌のハリや弾力改善にも効果があります。
一方、ピコトーニングは、肌の色素沈着を直接改善するというよりも、真皮の状態を整える効果に優れています。真皮の状態が良くなることで、結果的に肌の色素沈着が改善されるというわけです。また、真皮層に作用するので、毛穴の引き締めやたるみの改善といった効果も期待できます。
ダウンタイム:
レーザートーニングは通常数時間程度で赤みや腫れが収まりますが、個人差があり最大で1〜2日ほど続くこともあります。
一方、ピコトーニングは照射後に軽度の赤みと腫れが数日間あります。また、毛穴で炎症を起こして赤いプツプツやかゆみを伴うこともあります。(※この場合は炎症を抑える薬を併用します。)

両者は、同じ1064nmという波長の機器ですが、レーザートーニング(C6レーザー)とピコトーニングは、下記のような違いがあると感じています。
項目 | レーザートーニング | ピコトーニング |
深さ | 中程度(真皮浅層) | 深い(真皮中層) |
刺激の強さ | 弱い(〇) | やや強い(△) |
レーザートーニングとピコトーニングのどちらを選ぶ?
ピコトーニングが肝斑治療に適していると考える患者さんもいらっしゃいますが、当院の経験では、C6レーザーによるレーザートーニングの方が肝斑を悪化させるリスクが少ない傾向があります。
一方で、ピコトーニングは低出力で行う場合には安全性が高く、肝斑治療にも効果的であるとされていますが、照射方法や肌の状態によっては刺激が強く感じられることもあり、適切な設定で行わないと一時的に肝斑が悪化するケースも報告されています。
そのため、当院では患者さん一人ひとりの肌質や真皮層の状態を、肌分析診断器や医師の診察によって丁寧に判断し、最適なレーザーを選択・ご提案しています。このように個別対応を行うことで、より安全かつ効果的な治療を提供しています。
どちらを選ぶべきかは個人差がありますので、専門医と相談することをおすすめします。
フォトフェイシャル(IPL)
フォトフェイシャル(IPL)は、浅い層にあるシミやそばかす、くすみなどに効果が期待できる治療法です。IPLは主に表皮のメラニンに反応し、ターンオーバーを促して色素を排出しやすくします。
ただし、肝斑に対しては、IPLの光刺激によってかえって肝斑が濃くなるリスクがあるため、一般的には推奨されていません。近年は「肝斑モード」など低出力で照射する特殊な設定もありますが、標準的な使い方では肝斑悪化のリスクが指摘されています。
表皮のメラニンを減らしたい場合は、スキンケアの見直しや美白成分の使用でも一定の効果が期待できます。
肝斑治療には、真皮層まで届く1064nmの波長をもつQスイッチYAGレーザーやピコレーザーを弱い出力で照射する「レーザートーニング」などが広く用いられており、当院でもこれらの治療を推奨しています。このため、当院では肝斑治療にフォトフェイシャルは使用していません。
医薬品の肝斑への効果
飲み薬や塗り薬を使うことで、シミのもとになる色素が作られにくくなり、肝斑の原因にしっかりアプローチできます。
治療を始めたばかりの時期は、薬が肌に合っているかどうかをこまめに確認しながら、同時に日焼け止めや帽子などで紫外線から肌を守ることが大切です。
こうした工夫を続けることで、肝斑の改善がよりスムーズに進みやすくなります
トラネキサム酸(内服薬)
トラネキサム酸は、もともとケガや手術のときに血を止めるために使われていた薬です。
最近では、肌のシミや肝斑(かんぱん)にも使われるようになりました。
これは、シミのもとになる細胞が活発になりすぎるのを抑える働きがあるからです。
肝斑の治療では、1日にトラネキサム酸を3回に分けて飲む方法がよく使われています。
2ヶ月ほど続けると、多くの人でシミが薄くなることが、国内外の研究で確かめられています。
この薬は比較的安全とされていますが、まれに肝臓に負担がかかったり、体調に影響が出ることもあります。
長く飲み続ける場合や、体調に不安があるときは、必ず医師に相談しましょう。また、妊娠中に使う場合も、医師の判断のもとで慎重に行われます。
自己判断で飲むのは避け、必ず医師の指示に従ってください。
ハイドロキノン
ハイドロキノンは、シミのもとになる色素が作られるのをブロックする塗り薬です。使い方は、夜のスキンケアの最後に、気になるシミの部分だけに4%くらいのクリームをそっと塗ります。顔全体ではなく、シミのあるところだけに使うのがポイントです。
使い始めたら、肌に赤みやかゆみが出ていないか、定期的に医師のチェックを受けると安心です。もし、塗ったところがひどく赤くなったり、かゆくなったりしたら、いったん使うのをやめて、早めに医師に相談しましょう。無理に続けると、シミが濃くなったり、肌の色がまだらに抜けてしまうことがあります。
ハイドロキノンを使っている間は日焼けしやすくなるので、朝は必ず日焼け止めを塗り、帽子や日傘も活用してください。長く続けて使うと副作用が出やすくなるため、数ヶ月使ったらしばらく休薬するのが一般的です。また、妊娠中や授乳中の方は使わないようにしましょう。
市販薬の肝斑への効果
薬局やドラッグストアで手に入る市販薬は、病院で出される治療薬のように強い効果はありません。しかし、毎日のケアに取り入れてコツコツ続けていくことで、日差しによる肌のダメージを少しずつ防ぐ手助けになります。肝斑そのものをしっかり治す力はあまりありませんが、「これ以上ひどくしたくない」という方や、「肌全体の調子をととのえたい」という方には、十分役立つケアと言えるでしょう。
トランシーノ(肝斑に使う飲み薬)
「トランシーノ」は、肝斑の治療を目的に開発された市販の飲み薬で、薬局で購入できる第一類医薬品です。病院で処方されるトラネキサム酸よりも含有量は少なめですが、8週間(2ヶ月)の服用で肝斑に対して高い効果を確認できたという臨床データが報告されています(第一三共ヘルスケア公式サイト)。
ただし、腎臓の働きが弱い方や血栓傾向のある方、またピルを服用している方は、服用前に必ず薬剤師や医師に相談してください。
化粧水(肝斑に有効な基礎化粧品)
ビタミンC誘導体やナイアシンアミドを含む化粧水は、肌のターンオーバーを整える働きがあります。うるおいを保ち、炎症をやわらげる効果も期待できます。
すぐに目に見える変化があるわけではありませんが、レーザー治療後の乾燥対策としては有効です。また、日々のスキンケアに取り入れることで、紫外線による再発リスクの軽減にもつながります。
肝斑がレーザーで悪化することはあるのか

なぜ一般的なレーザーでは肝斑が悪化するのか
肝斑の治療において、レーザートーニング以外のレーザー治療では悪化することが多く見られます。特に、シミ取りレーザーやCO2レーザー、CO2フラクショナルレーザー治療などでは悪化率が高くなる傾向があります。
これらのレーザーは治療効果が高い反面、レーザー照射による炎症反応が強く起こるためです。肝斑は炎症によって悪化する性質があるため、炎症を極力抑えた治療方法が必要となります。
レーザートーニング治療の特徴
レーザートーニング治療は、1〜2回程度の短期間で肝斑を改善するのではなく、5〜10回など、治療期間と治療回数をかけながらゆっくりと治療することが重要です。この段階的なアプローチにより、炎症を最小限に抑えながら効果的な改善を目指します。
レーザートーニングでも悪化するケース
レーザートーニングであっても、肝斑が悪化するケースがあります。特に注意が必要なのは以下の患者さまです。
- 喫煙習慣のある方
- もともと肌の色が濃い方
このような場合は、通常のレーザートーニングの出力より20〜25%ほど出力を下げ、治療間隔も通常の1.2倍程度とし、より慎重にゆっくりと治療を進める必要があります。
治療中の経過観察の重要性
治療の途中経過においても、肌測定機器を使用して肝斑が悪化していないかを定期的に確認しながら治療を進めることが重要です。
時間をかけた治療の効果
時間はかかりますが、ゆっくりと回数をかけながら治療を行うことで、悪化させることなく肝斑をキレイに改善することが可能です。
さらに、治療期間中には毛穴の引き締まりや肌全体の質感向上という副次的な効果も期待できます。
【症例写真】レーザートーニング20回治療の経過
症例概要
- 治療部位:両頬の肝斑
- 使用機器:レーザートーニング
- 治療回数:20回
- 治療期間:約10ヶ月(月2回ペース)

治療のポイント
- 時間をかけてゆっくり治療することで悪化を防ぐ
- 段階的な改善により自然な仕上がりを叶える
- 肝斑改善と同時に肌質向上効果も見込める
この症例のように、時間はかかりますが、毛穴が引き締まって肌全体がキレイになるという嬉しい効果も期待できます。
肝斑(シミ)治療のよくある質問

Q1. 肝斑は完全に治せますか?
肝斑は原因が完全になくなれば治ります。肝斑の原因の外側からの原因である「炎症」「摩擦や刺激」「真皮の不安定さ」の改善、そして、内側からの原因「MSHの増加」が改善されれば治ると考えられます。
Q2. 肝斑と他のシミの違いは自分でわかりますか?
肝斑と他のシミを自分で見分けることは難しいです。肝斑は、左右対称で輪郭がぼんやりしているなど独特の特徴があります。しかし、類似のシミやADMとの見極めは困難な場合が多いです。クリニックでの診断をおすすめします。
Q3. 肝斑の人がやってはいけないことは?
肌への摩擦や刺激を避けることが重要です。強いマッサージや圧力のかかる施術は肝斑を悪化させる可能性があります。洗顔はゴシゴシせずやさしく、タオルは肌に押し当てて水分を吸収させるようにしてください。マスクも摩擦の原因になるため、やわらかい素材や少し大きめのサイズを選ぶことをおすすめします。
Q4. ビタミンCは肝斑の治療に効果的ですか?
効果的だといえます。ビタミンCは肌の炎症を抑え、メラニンの生成を抑制する働きがあります。肌に塗る場合は浸透力の高いビタミンC誘導体配合の美容液がおすすめです。ピュアビタミンCは肌からの吸収が悪いため、サプリメントで体の中からケアするのが効果的です。
Q5. 肝斑があるとき、メイクしても大丈夫ですか?
はい、メイクは可能です。ただし、摩擦を避けるためにクレンジングはやさしく行い、UVカット機能のある下地やファンデーションを選ぶと良いでしょう。「日焼け止め+パウダーファンデーション」だけのシンプルなベースメイクがおすすめです。
Q6. 肝斑ができやすい人の特徴は?
体質的にできやすい人がいます。ご家族に肝斑がある方は要注意です。摩擦や刺激が主な原因で、女性ホルモンの変化で悪化することもあります。
Q7. 肝斑はレチノールで悪化しますか?
適切に使えば改善効果がありますが、刺激の強い成分のため使い方次第で悪化することもあります。肌の状態を見て濃度を選び、注意して使うことが重要です。特に海外の個人輸入品の中には刺激が強い成分が配合されている場合もあり、悪化リスクが高いため避けたほうが安全です。
Q8. 肝斑は保険適用になりますか?
肝斑治療には基本的に保険が適用されません。治療費用や薬代が全額自己負担になります。ただし、肝斑とよく似ている後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)はアザなので、保険適用でレーザー治療ができます。ご自身の頬の色素斑が肝斑なのか、それとも何かほかの疾患なのか、判断がつかない場合は保険診療のクリニックなどでも診断は可能ですので皮膚科にご相談ください。
肝斑(シミ)治療まとめ

肝斑は、遺伝的要因や摩擦・紫外線、ホルモンバランスといった複数の要因が重なってできる「シミ」の一種であり、1つの治療法だけでの改善は難しいとされています。
当院では、肌の状態を詳しく確認した上で、出力の低いレーザー治療(レーザートーニング)と、トラネキサム酸などの内服薬を組み合わせた治療を行っています。
これにより、メラノサイト(色素細胞)の活動と炎症の両方を抑えることが期待でき、肌への負担を抑えながら肝斑を薄くし、その後の再発も防ぎやすくなります。
治療の効果をしっかり保つには、日焼け止めをこまめに塗る、肌に優しい洗顔を心がける、十分な睡眠をとるなど、日々のセルフケアも欠かせません。
治療中は担当医と肌の状態を共有し、状況に合わせて治療内容を調整していきますので、適切な治療とセルフケアを続けることで、安全性と満足度の高い結果につながるでしょう。
参考文献
本記事は、以下の信頼できる情報源にもとづき作成されています。
- 日本皮膚科学会「美容医療診療指針 令和3年度改訂版」
- 日本皮膚科学会「肝斑診療ガイドライン 2019年改訂版」
- 日本香粧品学会誌「顔面肝斑に対する紫外線および摩擦の影響 2018」
関連記事
シミが気になる方でトラネキサム酸に注目している方も多いのではないでしょうか。 トラネキサム酸は医師による処方でも市販でも入手は可能です。 肌表面に刺激を与えずメラニンの増生を抑える効果があるため、肝斑治療薬として重宝され…続きを読む
「ファンデーションの色が合わなくなった」「常に疲れて見える」 そう悩んでいる方は、くすみが原因かもしれません。 一言でくすみと言っても種類があり、それぞれ原因や対処法が異なります。 くすみが気になるからと言ってやみくもに…続きを読む
今回は、もらった化粧品のサンプルを使う際に「やってはいけない3つの行動」について、お伝えします。 ここで紹介する3つのNG行動をしてしまうと、せっかくもらった化粧品のサンプルの良さが十分にわからないままになってしまうこと…続きを読む