ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

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中学生のころから、「両頬にシミがある……」「そばかすかな?」と悩んできた方も多いのではないでしょうか?

当クリニックに「シミを取りたい」「そばかすを取りたい」とご相談にいらっしゃる患者さまのうち、約20人に1人の割合で、実際には「後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)」と呼ばれるアザであることが判明するケースがあります。

※アザ・太田母斑・後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)は、当院にて保険で治療することが可能です。

アザなので、残念ながらシミに効く美白剤では効果がないのですが……。でも、じつはこのアザ、レーザー治療がとても効果的で、しっかり治療すれば再発もありません

ですから、気になっている方は治療をぜひ受けていただきたい疾患の1つです。

このページでは、そんなADMについて解説し、治療方法もお伝えしていきます。

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス acquired dermal melanocytosis)とは

ADMは、もともと顔にできるアザである「太田母斑(おおたぼはん)」の一種として分類されていました。

しかし、一般的な太田母斑とは異なり、このアザは赤ちゃんの頃には存在せず、小学生頃から後天的に現れるという特徴があります。そのため、現在では「後天性真皮メラノサイトーシス」と呼ばれており、別名として「遅発性太田母斑」や「対称性真皮メラノサイトーシス」とも呼ばれています。

ADMは太田母斑よりもよく見られ、20代でシミやそばかすが気になっている方の10人に1人ぐらいの頻度で見られる印象です。10代後半から30代にかけて発症し、20歳代に発症のピークがあります。

また、ADMは性別による発症頻度に差があり、男性よりも女性に多く見られる疾患です。

色素斑(アザ)の色の正体は、真皮の中に存在しているメラニンです。表皮内にメラニンがあるシミとは、色の存在する深さが異なります。

シミとADMの違いを示した図解

①シミ:表皮だけにメラニンがある

②ADM:真皮の中にメラニンがある

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の特徴

ADMには下記の①〜③の特徴があります。

ADMの症例
  1. 発生部位:肝斑とほぼ同様
  2. 鼻の近くに青っぽいシミが出ることもある
  3. 色と形状:青みがかっている。ドット同士が孤立している

この青っぽいシミ、青みがかった色合いは、赤ちゃんに見られる蒙古斑と似ています。

ADMの分布範囲・色合いのバリエーション

1)頬部に淡い色素斑が限局して現れるタイプ

 

ADMの症状_頬部に淡い色素斑が限局して現れるタイプ

2)頬~まぶた、こめかみにかけて広範囲に分布しているタイプ

ADM症例_広範囲

3)目のすぐ下(目頭の下)と頬に色素斑が分布しているタイプ

ADM症例_目のすぐ下(目頭の下)と頬に色素斑が分布

ADMと似ている色素斑2つ

よく似ている色素斑1.そばかす(雀卵斑)

そばかす症例

3歳ごろから、両頬を中心に3mm程度までの小さな点々の色素斑が多発します。
色素斑はドット状で、それぞれ独立しています。

ADMとは違い、鼻筋(鼻の背)にもドットが見られることが特徴です。

日光に当たりやすい夏季に濃くなり、冬はやや薄くなる傾向があります。
そばかすも、ADMと同様に治療効果が出やすいので、そばかすなのかADMなのか迷ったら、ぜひクリニックにご相談ください。

よく似ている色素斑2.肝斑

肝斑の特徴:ボヤーっと面で広がる茶褐色のシミ。おもに、両頬に左右対称に広がります。

肝斑症例左ほほ

肝斑とADMが合併している例

また、よく似ている疾患の肝斑と、ADMが合併していることもあるので、注意深く診察することが必要です。

※肝斑を合併している場合は治療方法に制限が生じます。

ADMと肝斑の見分け方

肝斑とADMが合併している場合の見分け方をご紹介します。

ADMは「やや青みかかった色素斑、ドット同士は独立して存在している」という特徴を持っています。一方、肝斑は薄茶色で面で広がる色素斑という特徴で見分けることが可能です。

ADMとそばかすの見分け方

とてもよく似ていますが、下記の点で異なります。

  • ADM:斑点がやや青みを帯びている。鼻背に斑点状の皮疹は見られない。鼻の先端やフチに青い色素斑がみられることはある。
  • そばかす:淡い茶色、鼻背にも斑点がある。
そばかすADM並列

それぞれの疾患の特徴まとめ

3つの疾患について以下にまとめましたので、見分けるときの参考にしてください。

【疾患別の特徴】
 ADMそばかす肝斑
発症年齢小学生ごろ~30代小学生ごろ~30代30代以降
皮疹の色青みが感じられる淡い茶色淡い茶色
皮疹のタイプ独立した斑点、目の下、鼻周囲では青い局面独立した斑点広く面で広がる色素斑
特徴的な症状蒙古斑のような青み鼻背にも斑点がある摩擦で悪化

 

ADMの原因

ADMの発症には遺伝的な要因が関与していると考えられていますが、具体的にどの遺伝子が影響しているかについては、現在のところ明確になっていません。

実際の診療現場においても、遺伝的要因を裏づける事例をよく経験します。

例えば、50代のお母さまがADMの治療で通院されているのを見て、20代の娘さまも治療を希望されるケースや、姉妹お二人で同時に受診されるケースなどがあり、家族内での発症パターンから遺伝的要素の存在を実感しています。

ADMは遅くとも30代までに発症するケースが9割以上を占めるため、40代を過ぎてから初めて色素斑が気になるようになった場合は、ADMよりも他のシミなどの疾患を優先的に検討します。

 

ADMの治療

ADMは、真皮内にメラニンがあるので、「Qスイッチレーザー(ナノ秒レーザー)」「ピコ秒レーザー」による治療が効果的です。表皮の色素斑にしか反応しないIPL(光治療の一種)では残念ながら治療効果はありません。

レーザーの種類で効果の出方が異なるので、下記に表にまとめました。

項目ルビーレーザー
(ナノ秒)
アレキサンドライトレーザー
(ナノ秒)
YAGレーザー
(ナノ秒)
ピコYAGレーザー
(ピコ秒)
波長(nm)5957551064532
効果ADMに効果的。
数回の治療で完了することが多い
ADMに効果的。
数回の治療で完了することが多い
ADMへの効果は弱く、
10回程度の治療が必要
ADMにとても効果的。
1〜3回の治療で完了することが多い
メリット治療回数が少ない治療回数が少ない治療してもバレにくい
色素沈着が出にくい
効果が高く
少ない回数で治療終了
デメリット炎症後色素沈着が
できやすい。
半年ほど残ることも
炎症後色素沈着が
できやすい。
半年ほど残ることも
治療回数が多くなる色素沈着が出る場合もあるが
軽度で済む
ダウンタイム7〜10日でかさぶたが目立つ7〜10日でかさぶたが目立つほとんどなし軽度のかさぶた

当院では、レーザーごとの治療効果やデメリット、ダウンタイムの程度に加え、肝斑の有無やスキンタイプなどを総合的に判断し、

  • ピコ秒レーザー(YAG)532nm
  • Qスイッチレーザー(ナノ秒)YAG 1064nm

の2種類の治療の中から、医師が適切な方法をご提案しています。

治療パターン1

  • 「ピコレーザー 532nm」で治療
  • 治療は3ヶ月に一度が目安

enLIGHTen(エンライトン)®️SR

メリット

  • 少ない回数でADM治療ができる 目安1~3回ほど
  • ほとんどのケースで効果的

デメリット

  • 治療後に1週間ほど目立つかさぶたがつく
  • 治療後1週間ほどは、肌に赤みや点状の内出血が見られる
  • 肌質によってはレーザー後に炎症後色素沈着(PIH※)ができ、このPIHは改善するまでに半年ほどかかる

※PIHを改善するための治療(フラルスキン、 レーザートーニング施術)も可能です。これらの治療を行う場合は別途費用がかかります。

治療パターン2

  • 「ナノレーザー 1064nm」で治療
  • 治療は1ヶ月に1度が目安
メドライト医療用レーザー

メリット

  • 治療後は軽度の小さな点状の内出血ができるかどうかなので、日常生活に支障なく治療をお受けいただきやすい
  • 肝斑があっても悪化しにくい
  • PIHが起きにくい

デメリット

  • 治療回数が多い(目安としては10回は必要)。経過により継続治療の場合もある
  • 効果が出にくく、532nmピコレーザーを併用する場合もある

レーザー治療の効果を最大化するアフターケア

レーザー後の炎症後色素沈着を改善し、素早くアザの色素を肌から除いていくためにレアセラムを使ったスキンケアトラネキサム酸の内服(※1)も必要です。

※1. トラネキサム酸内服は、血栓ができやすい体の状態の方は内服できません。医師の診断で患者さま一人ひとりの体質や既往歴を確認し、安全に服用いただけるかを判断いたします。

ADM治療_ビフォーアフター症例
ADMビフォーアフター症例_ナノ

ADMに関するよくある質問

Q. 治療は痛いですか?

レーザーのパチンとはじくような痛みがあります。

レーザー照射前に麻酔クリームを使用し、施術時の痛みを緩和します。

また、麻酔クリームを使用しても痛みがある場合は保冷剤で冷却しながら照射すると痛みは和らぎます。

治療後の痛みに関しては、患者さまにより個人差がございますが、長い方だと2.3日程度痛みが残る場合があります。

※麻酔クリームは別途料金となります。

Q. 1回の治療でどのくらい時間がかかりますか?

麻酔クリームの時間を含めて、両頬のADM部分のレーザー照射だけの場合は30分程度で施術は終了します。

Q. ADMは美白剤で効果がありますか?

ADMは肌の深いところにメラニンがあるので、美白剤では効果がなく、レーザー治療が必要です。

Q. ADMは再発しますか?

ADMは適切にレーザー治療を行えば、再発はほとんどありません。
ただし、肝斑が合併している場合は、肝斑部分が再発することはあります。

Q. ADMは男性にも発症しますか?

女性に多く発症しますが、男性にも発症することがあります。

Q. ADMは何歳くらいで発症しますか?

10代(中学生のころ)~20代半ばごろまでに発症することが多いです。まれに40代で発症することもあります。

Q. ADMとそばかすの違いは何ですか?

ADMは皮膚の深いところにメラニンが存在する「アザ」で、やや青みがかった色の色素斑です。一方、そばかすは皮膚の浅いところにメラニンが増えている「シミ」タイプで茶色の色素斑です。

Q. ADMと肝斑の違いは何ですか?

ADMは「アザ」です。レーザー治療で完治すると再発はありません。一方、肝斑は「シミ」です。日常の刺激やホルモンの影響で悪化や再発もあるので、治療だけでなくスキンケアの見直しなども重要になります。

Q. 炎症後色素沈着とはなんですか?

炎症後色素沈着とは、湿疹、ニキビなどの炎症のあとや、レーザー治療後に見られる、色のぶり返しのことを指します。
日に当たるとすぐに肌が褐色に変化しやすい方や、肝斑がみられる方、マスクなどで肌がこすれたりすると発症しやすいことが分かっています。
発症した場合、消えるまで数ヶ月から半年、ときには1年くらいかかることもあります。

Q. 炎症後色素沈着のリスクを減らすためにはどうしたらいいですか?

治療後に、炎症をとにかく抑えること、紫外線をブロックすることが重要です。
クリニックで治療後にお渡しする軟膏を、指示の通りお使いいただけると、炎症を抑えられます。

Q. 炎症後色素沈着を早く治すにはどうすればいいですか?

紫外線をしっかりブロックする、こすらないなどが大事。また、早く治そうとしてあれこれ美白剤を使うと逆にかぶれて炎症後色素沈着を悪化させてしまうこともあります。
当院では高浸透型ビタミンC誘導体を配合したレアセラム美容液を使うことをまずはおすすめします。淡い色素沈着であれば、美容液・レアセラムだけで十分ですが、色素沈着が濃い場合は、合わせてトレチノインを使用すると、より早く改善します。

Q. レーザー治療は何回くらい必要ですか?

FLALUクリニック(フラルクリニック)では、2種類のADMレーザー治療をご提案しています。肌質、炎症後色素沈着の起こりやすさなどを診察で見極めて、患者さま一人ひとりに適したレーザーをおすすめします。

1.532nmのレーザー:レーザーの反応が非常に良好で2、3回の治療であとを残すことなく消えることが多いです。3か月に一度レーザーを照射しますので6〜9ヶ月で治療は完了します。ただし、体質によってはレーザーによる炎症後色素沈着が起きる場合があります。

2.1064nmのレーザー:PIHが起きにくく、ダウンタイムもほとんどないので、お受けいただきやすい治療です。肌質によって1~3ヶ月に一度レーザー照射を行い、5~10回ほどで治療が完了します。

1と2を組み合わせた治療も可能ですので、お気軽にご相談ください。

※治療間隔、回数は目安となります。個人差がありますことをご了承ください。

Q. レーザー治療のダウンタイムはありますか?

レーザーの種類により異なりますが、532nmレーザー治療では、1週間ほど目立つかさぶたがつくことがあります。1064nmレーザー治療では軽度の小さな点状の内出血ができる程度で、日常生活に支障は少ないです。

Q. レーザー治療後に注意することはありますか?

・レーザー後の炎症後色素沈着を改善し、迅速にアザの色素を肌から除いていくために、レアセラムを使ったスキンケアやトラネキサム酸の内服が必要となる場合があります。
・炎症をなるべく早く引かせるために、治療後にお渡しした軟膏も指示通りお使いください。
・また、治療後3~6ヶ月間は紫外線をしっかりブロックしてください。

Q. レーザー治療のリスクを教えてください。

レーザーを極端に強く照射したり極端に治療期間が短いと、レーザー後に色が白く抜けることがあります。FLALUクリニックでは、治療前に肌分析機でお肌の状態を確認し、白抜けが元からないか、治療経過中も適宜分析器でお写真を撮りながら肌の状態をしっかり見ていきます。

Q. 40代を過ぎて初めて気になった場合もADMですか?

40代を過ぎて初めて気になった場合は、肝斑など他のシミの可能性が高いといえますが、まれにADMの方もいらっしゃいます。ご自身では判断がむずかしいので、ぜひクリニックへご相談ください。